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2018年6月18日月曜日

ラベンダーで扁桃体が過敏になるのを防ぐ

<目次>
1.匂いは直接扁桃体に届く
2.匂いに関しての療法としては、アロマテラピーがある
3.ラベンダーが不眠を改善いて扁桃体の過敏を防ぐ
4.ラベンダーが副交感神経を刺激して扁桃体が過敏になるのを防ぐ
5.ラベンダーはセロトニンの分泌に関与し、扁桃体が過敏になるのを防ぐ
6.ラベンダーによる血流の変化は扁桃体やその周辺に及んでいる

1.匂いは直接扁桃体に届く

目で見たり、聞いたり、触った感覚といった全身のあらゆる感覚は、感覚の中継点ともいうべき視床という場所を経由した後、大脳新皮質にある一次感覚野という場所に届きます。一次感覚野は他の領域と比較して最初に情報が届く場所と考えていただいて差し支えありません。

しかし、匂いに関しては視床を介さず直接扁桃体に刺激が及びます。このようなことから、扁桃体に直接的に刺激を行うことができる可能性があります。

扁桃体は感情の中枢である大脳辺縁系に属しており、香りの吸入で、体内に変化が起こり、血圧の変化など複数の生理反応が誘発される可能性があったとの報告もあります。

アルツハイマー病やパーキンソン病などの扁桃体や海馬を含む辺縁系がからむ病気の場合の、初期の症状の一つに匂い異常として認められることも知られており、匂いと大脳辺縁系、扁桃体は関係が深いものと言えます。

2.匂いに関しての療法としては、アロマテラピーがある。

匂いに関しての療法としては、アロマテラピーがあります。その中でも代表的なラベンダーの精油を吸入すると、嗅覚器で匂いを感知し、脳に伝わり、全身へ影響をあたえることが可能ではないかと言われております。

ただし、詳しいメカニズムなどはわかっていないことも多く、まだまだ病気の治療法としては推奨できるものではありません。

3.ラベンダーが不眠を改善いて扁桃体の過敏を防ぐ

一般の医療機関などでも行われている検討としては、不眠に関する研究があります。例えば、症例は少ないですが、睡眠障害をもった高齢者に対して、ラベンダーオイルを用いたアロマテラピーを行い、5例全例で著明な改善効果がみられたとするものがあります。

最近の研究では、睡眠不足により扁桃体活動の調節異常が生じ、ネガティブな情動刺激に対する扁桃体の過剰反応が生じるということもいわれておりますので、ラベンダーを使用することで睡眠状態を改善すると扁桃体が過敏になることが防ぐことにつながります。

4.ラベンダーが副交感神経を刺激して扁桃体が過敏になるのを防ぐ

散歩の間に心臓の心拍数を調整して身体中に必要な血液を送ったり、体温を下げようと汗をかいたりということは、自分の意志ではできません。

また、食事をとろうとしたときに口に物を運んで飲み込むまでは意識的にできますが食べ物を消化したり、吸収したりといった身体の活動は意識的には出来ません。
無意識のうちに私たちの心臓や肺、腸などの内臓の働きを整えてくれている大事な神経が自律神経です。
このように全身の多くの場所を調整しているのが自律神経ですが、一度バランスが崩れると体のさまざまな場所に影響がでます。このような自律神経に対してラベンダーの香りが影響しているという報告があります。
ラベンダーの香り付き湿布を右肩に貼り付けて検討したところ、副交感神経の増加が示唆されたそうです。PET検査によって扁桃体とも関連が深い大脳辺縁系の左後部帯状回の活動の上昇、右側頭葉の活動の低下が示されたそうです。

5.ラベンダーはセロトニンの分泌に関与し、扁桃体が過敏になるのを防ぐ

ラベンダーに含まれている酢酸リナリルという成分が、扁桃体が過敏になるのをおさえる経伝達物質である「セロトニン」の分泌を促し、リラックスさせる働きもあるとされています。セロトニンの分泌不足によってうつ病がおこるのではないかと考えられていますのでうつ病の方に対する効果を期待する論調もあります。(ただし、セロトニンとラベンダーの直接的な結びつきを検討している論文は少ないためメカニズムが多少不透明ではあります。)

6.ラベンダーによる血流の変化は扁桃体やその周辺に及んでいる

PETでの実験でラベンダー刺激を行った際に共通して見られる変化としては、右上側頭回の活動低下と左後部帯状回の活動の上昇が見られたとする報告があります。帯状回は大脳辺縁系に属しておりますので、扁桃体とも深い関係にあります。

また、側頭葉前方の活動の低下を認めたことでラベンダーにより情動的に安定したと考えることができると報告されている。

このような研究においても大脳辺縁系を中心とした部位にラベンダーの香りが影響を与えていることがわかります。

その他にも、ラベンダーの単独刺激では、両側扁桃体、視床、前頭前野、特に眼窩回での 血流の増加を認めた報告、香りを嗅ぐと意識障害の有無にかかわらず側頭 葉内側部、扁桃体、海馬、前頭前野などの脳血流が増加 した報告がある。

血流の増加や減少は一過性のものや、計測のタイミングなどで変動するもの多いと考えられるため解釈が難しい場合もありますが、いずれにしてもラベンダーの香りをもとに扁桃体や大脳辺系、視床下部などの血流の変動を示す報告が多く、ラベンダーなどの香りによって扁桃体が過敏になることを防ぐ可能性がある。

ラベンダーの香りと神経機能に関する文献的研究に詳述されており参照いただきたい。

参照
本間 生夫, 政岡 ゆり, 脳波・筋電図の臨床 呼吸関連電位 嗅覚・情動のメカニズム,臨床脳波(0485-1447)巻4号 Page234-239(2009.04)
品川 宏美, 品川 奈美子認知症患者にアロマテラピーがもたらす睡眠導入への効果,日本精神科看護学術集会誌581 Page158-159(2015.06)
伊藤正敏,佐々木雄久,渡辺和彦 他, ラベンダー香 りの生理効果に関する研究,Journal of International Societyof Life Information Science,22,109-116,2004. 
Desmedt JE, Huy NT, Bourguet M, The cognitive P40,N60 and P100 components of somatosensory evoked potentials and the earliest electrical signs of sensory processing in man, Electroenceph Clin Neurophysiol, 56, 272-282, 1983.
上田 孝,意識障害に対するアロマテラピー香りが脳 に及ぼす影響―三次元的局所脳血流量の変化から―, BRAIN NURSING,16,1398-1403,2000. 
上田 孝,柳田美津郎:香り刺激が脳に及ぼす影響― 99mTc-HMPAO持続静注下連続dynamic SPECT法を用 いて―,脳循環代謝,2,219-220,2000
上田 孝, 音楽と香りを用いた痛みの緩和,脳循環代謝, 13,382-383,2001. 33)上田孝,池田善朋香りと音楽を用いた精神神経症状へ の対処―痛みと癒し,癒しの脳内メカニズム―,心療内 科,7,310-313,2003.
上田 孝,脳と心へのアプローチ,意識障害者のトータ ルケア,EB NURSING,3,52-58,2003.
由留木 裕子(関西医療大学 大学院保健医療学研究科), 鈴木 俊明,ラベンダーの香りと神経機能に関する文献的研究,関西医療大学紀要(1881-9184)6巻 Page109-115(2012.10)

参考
匂いの快/不快に対するfMRI脳イメージングと官能評価の検討
吉田 達哉(千葉大学 院工), 力群, 一川 , 外池 光雄, 岩坂 正和
日本味と匂学会誌(1340-4806)173 Page453-456(2010.12)
感じる脳、創造する脳 脳科学からみた「よりよく生きる」知恵 香り豊かに暮らす 呼吸・嗅覚・情動の脳内関連の視点から
政岡 ゆり(昭和大学 医学部第二生理学教室)
心身健康科学(1882-6881)52 Page64-69(2009.09)
 香りが脳に及ぼす影響 痛みと癒しの脳内メカニズム
上田 (誠友会南部病院 脳神経外科), 池田 善朋
日本アロマセラピー学会誌(1349-1857)61 Page022-027(2007.05)
アロマテラピーが睡眠に及ぼす影響についての文献的考察
森木 美帆(京都府立医科大学 医学部看護学科), 山中 龍也
京都府立医科大学看護学科紀要(1348-5962)23 Page79-87(2013.12)
 アロマテラピーの芳香浴がもたらす睡眠への影響について 半構成的インタビューの結果より
今村 圭子(復光会垂水病院), 中井 素納子
日本精神科看護学術集会誌551 Page310-311(2012.05)
 高齢者の睡眠障害・意欲低下に対するアロマテラピーの有効性の検討 ラベンダー、オレンジスイート、グレープフルーツ、ティートゥリーオイルを使用して
木内 令子(日比野病院 薬剤部), 日比野 真吾, 日比野 敏行
Geriatric Medicine(0387-1088)4911 Page1339-1343(2011.11)
 睡眠障害に対する非薬物治療 ハーブやアロマによる睡眠改善
白川 修一郎(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所), 松浦 倫子, 廣瀬 一浩
薬局(0044-0035)6210 Page3388-3390(2011.09)
 アロマによる自律神経活動と脳活動
旭東(東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター 核医学研究部), 田代 , , 山家 智之, 仁田 新一, 伊藤 正敏
Journal of International Society of Life Information Science(1341-9226)242 Page383-395(2006.09)



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